現役の電気通信主任技術者が何ができるか資格試験に役立つ9つの業務を徹底解説!
電気通信主任技術者ってどんな仕事をする人なの?
電気通信主任技術者の仕事内容は、あまり詳しく解説しているところが無いため分からないですよね?
私も資格試験の勉強をしているときに、よく感じたことです。
こんにちは、現役電気通信主任技術者の若葉です。
電気通信主任技術者の業務は、なかなかイメージができないですよね。
資格試験の紹介をしているブログも「電気通信主任技術者は、工事・維持及び運用を監督する人です」と光ケーブル敷設工事場所と工事現場監督の画像で書かれていることがよくあります。
これ、実際はほとんど間違っています!
設備を作る「工事」の現場監督は「電気通信工事施工管理技士」(主任技術者・監理技術者)の業務です。
え?何が違うの??
そうですよね。違いがよく分からないと、資格試験の勉強をしていても頭に入ってきません。
しかも、工事の維持管理は電気通信主任技術者の大事な業務の1つではありますが、9つある業務の中の1つでしかありません。電気通信主任技術者になりたいと思っている方が、資格試験でよく分からない原因の1つです。
この記事では、電気通信主任技術者の9つの業務を詳しく解説します。
業務内容を知ることで、資格試験で何を求められているか分かります。
本記事作成にあたり、電気通信主任技術者資格試験の公表されている過去問題を全て解いてみました。
試験勉強をしていた当時は、範囲も広くてよく分からないし難しいと感じましたが、現在は「幅広いけど基礎的なことで電気通信サービスの安全・信頼性を確保するためには必要なこと」だと実感します。
不安に感じなくても大丈夫ですよ!
私も試験合格後、実際の業務を経験していたら知識やスキルはしっかりと補完されていきました。
電気通信主任技術者資格試験の勉強は、今でも私の基礎知識としてやっておいて本当に良かったと感じています。
本記事では、電気通信主任技術者の業務が試験問題の何の項目に該当するのかを「記事内のオレンジ枠で囲った部分」で解説しています。業務内容と合わせて読むことで理解しやすくなりますよ!
それでは、現役電気通信主任技術者が9つの業務について、実体験を含めて詳しく解説します!
この記事を書いている私「若葉」はこんな人です。
- 電気通信主任技術者(伝送交換・線路)選任者
- 1級電気通信工事施工管理技士、監理技術者
- 工事担任者
- 第二種電気工事士
- 第三種電気主任技術者
- 第一級陸上無線技術士
- その他、電気・通信系以外にも複数資格所有
電気通信主任技術者 工事、維持及び運用の監督に関する9つの業務
電気通信事業法第45条では、電気通信主任技術者は「電気通信設備の工事、維持及び運用に関する事項を監督する」と定められています。
第四十五条 電気通信事業者は、事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関し総務省令で定める事項を監督させるため、総務省令で定めるところにより、電気通信主任技術者資格者証の交付を受けている者のうちから、電気通信主任技術者を選任しなければならない。ただし、その事業用電気通信設備が小規模である場合その他の総務省令で定める場合は、この限りでない。
出典:e-Govポータル「電気通信事業法」https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=359AC0000000086
工事、維持及び運用の監督に関する業務内容は、電気通信主任技術者規則第3条4項(出典:e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp)に定められています。簡単に説明すると次の9つになります。
9つ業務が、電気通信主任技術者の仕事です。
工事に関することは、業務の中の1つにしかすぎません。
業務の大部分は、「電気通信設備の安全・信頼性の確保」と「運用ルールと体制構築」です。
まだ分かりづらいため、体験談を含めて1つずつ詳しく解説します。
電気通信設備の工事、維持及び運用に関する業務の計画立案
電気通信サービスの安定的な提供を確保するために、電気通信事業者には事業用電気通信設備の安全・信頼性を確保するための制度(総務省ホームページ)があり、安全・信頼性を確保するためには、次の5つの項目が電気通信事業者に求められます。
- 強制基準
- 自主基準(管理規定)
- ガイドラインなどの推奨基準
- 監督責任
- 報告義務
強制基準とは、必ず実施しなければならない基準です。具体例は、予備機器や停電対策、安全性やセキュリティ対策などがあります。電気通信主任技術者は、基準に沿って工事・維持・運用を行います。
自主基準(管理規定)とは、事業者ごとの特性に応じた自主的な取組の基準であり、次の4つの基準を定めます。
- 設備管理の方針
- 設備管理の体制
- 設備管理の方法
- 設備統括管理者の選任
計画立案には自主基準(管理規定)を策定することが求められています。
方針・体制・方法について、電気通信主任技術者が主となり基準を作り、計画を立てることが最初の業務になります。
この管理規定……とても重要で私の職場のデスクなどすぐに見られる場所に置いていますが、策定するときや見直す時など毎回とても苦労します。
電気通信設備工事の実施体制や手順作成、正常性試験
管理規定で定めることに、工事に関する次の3つがあります。
- 工事の仕様や手順書の作成、遵守、着工前の工事実施者との確認に関すること
- 工事後の検査や試験に関すること
- 設計、工事、維持及び運用の従事者に対する教育及び訓練の実施
工事実施前の仕様・手順書作成や安全確認、手順書の遵守状況確認。工事後に設計・仕様通りの設備ができているか?障害発生時の予備機器への切替などができるか?の正常性試験を実施することの「安全・信頼性の確保」を行う業務です。
電気通信主任技術者資格試験 設備管理科目の「施工管理」項目で求められる内容です。
上記①に該当する項目
【施工計画】 仕様書(設計要件、図書)、施工計画書、線路主任の場合は地権者などとの折衝も有り
【工程管理】 工程管理、請負契約の管理など
上記①及び②に該当する項目
【品質管理】 品質管理手順、検査・試験手法など
上記③に該当する項目
【安全管理】 事故対策防止、安全管理など
工程管理手法や品質管理手法は、必ず試験で問題が出される重要な業務です。
電気通信主任技術者は電気通信サービスの品質・信頼性が担保されるようにしなければなりません。
仕様や工法手順書作成は、品質と信頼性に直結するためとても気を使います。設備構成や仕様、スケジュールは総務省総合通信局と事前打ち合わせや調整することも業務になりますね。
工事で電気通信設備を作る現場の監督をイメージしてたけど、電気通信サービスが問題なく提供できるかどうか工事を含めて監督する感じだね!
実際の工事は「電気通信工事施工管理技士(監理技術者・主任技術者)」監督のもとで実施となります。小規模な工事は電気通信事業者(主任技術者)が監督します。
電気通信設備 監視の方針、方法や体制構築
設備構築後、運用稼働中に電気通信サービスが正常に提供できているか常に監視する必要があります。
- 監視を行う設備はどの程度・何の項目を監視するか?
- 何の設備をどうやって監視するか?
- 監視体制や緊急連絡体制はどうするか?
監視というのは、品質などが「正常な状態」から「異常な状態」となる時に把握することです。
管理規定で自社が定めたルールや強制基準となっている項目より、「品質と信頼性の維持」に影響がある場合に早期把握をして対応する必要があります。
電気通信主任技術者資格試験 設備管理科目で求められる内容です。
【設備管理一般】 通信品質
【維持運用管理】 維持運用、委託の管理、保全種類など
監視は緊急度が高い順に「クリティカル」「メジャー」「マイナー」「ノーマル」で監視レベルにより段階的に体制を構築することや、SNMPや接点監視など設備種類によって監視方法も検討します。通信電力は非常用発電機稼働やファシリティ(構築物)の電気錠・空調稼働や熱量確認など、監視をどうするか方針や体制を検討します。
監視はとても重要な業務です。
新しく電気通信設備やサービス提供開始をする前などは、監視方法や体制について多くの議論をします。
設備メーカーと保守管理委託契約を締結することや、自社の組織・監視体制構築は電気通信主任技術者の業務の1つです。
保守委託費用は24時間365日なので高額になりがち。
経営者(電気通信事業者)と電気通信主任技術者でよく議論しています。
ソフトウェアのリスク分析や更新
電気通信サービスは、個人情報を多数扱うことやサーバーやネットワーク、音声交換機など「外部ネットワークやプログラムから攻撃されることや、盗用・侵入のリスク」が非常に高いです。セキュリティ対策は当然ですが、最新のセキュリティパッチの検証・対応、分析がとても重要です。
事業所内にセキュリティ担当がいても、電気通信事業全体を俯瞰して管理を行う電気通信主任技術者が連携・指摘を行い、ソフトウェア分析や更新対応を実施する必要があります。
資格試験や選任主任技術者の講習会でも、必ずセキュリティ分野の問題がでます。
伝送交換・線路主任資格試験の「設備管理」「法規」では対策をしっかりしましょう。
セキュリティの内容は、業務でも最重要課題です。
伝送交換主任技術者試験では、「設備管理」科目の「ソフトウェア管理」に該当する業務です。
ソフトウェア開発プロセス手法を把握した上で、ファイル世代管理やバックアップ管理、更新に伴う情報収集など、色々なITエンジニアと協力して電気通信主任技術者として監督することも必要となります。
電気通信設備の適正な設備容量の確保
伝送交換設備は、需要予測をしっかりと計画して電気通信サービスが問題なく運用できるように、設備容量を確保する必要があります。具体的には次の通りです。
- 【伝送設備】伝送設備容量の確保
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- 伝送路網設計時の光ファイバー数(芯線数)の確保
- 光伝送装置の容量選定(メディアコンバータ種類や波長多重技術など)
- 【交換設備】電話交換機やネットワークスイッチのリソース確保
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- コアネットワーク設備設計(5G、マルチメディア、デジタル交換設備)のリソース選定
- ネットワークスイッチ選定(ポート種類、IP・VLAN設定数、処理速度)
- 【無線設備】無線設備の適切な配置
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- 電波伝搬を考慮したアクセス系無線設備
- 需要予測による無線設備の確保
- 【通信電力】電力容量の確保
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- 停電時にも十分に供給できる非常用発電機容量、燃料の確保
- 将来の設備新設・更新を考慮した電源設備の確保
- 【サーバー設備】サーバー容量・処理能力
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- ハードウェアの容量確保、将来増設考慮
- 最近はクラウドや仮想化を考慮した容量の確保とリスク分散も検討
- 【通信線路】光ケーブル設計
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需要予測や増設を考慮した伝送路網の構築、接続点(光クロージャ)の配置
- 【水底線路・通信土木】
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- 一度構築したら交換や追加が難しいため、需要予測をしっかり計画する。
- 通信土木は、管路数確保やメンテナンスがしやすい場所にマンホールを設けるなど。
たくさんあるね。
でも、容量少ないとインターネットやサービスがすぐに止まっちゃったりすると困る。
電気通信主任技術者試験では、「電気通信システム」と「設備の概要」を把握した上で需要予測を立てながら検討する業務になります。
電気通信設備の仕組みや機能をしっかりと理解しなければ、設備容量を算出できないため、まずは基礎と設備について理解をすることが大事です。
電気通信設備 障害発生時の対応、再発防止策
電気通信主任技術者として、障害発生時の対応方法はとても重要な業務です。障害を発生させないことが大事ですが、設備の故障や自然災害など障害は必ず発生します。設備の故障以外にも、トラフィックが集中することによる輻輳や、プログラムのエラーなどにより電気通信サービスに影響が出る場合もあります。
障害が発生した場合に、迅速に復旧するためには事前の準備がとても大切です。電気通信主任技術者として、障害発生時の対応は次のとおりです。
- 想定しうる障害の対応について計画策定を行う
- 障害発生時、迅速に故障検知可能なシステムを構築する
- 障害を迅速に復旧するために指揮命令系統の体制を整える
以前、経験したことは地震発生に伴い設備基地局で障害が発生し、基地局に駆け付けた時に電気錠(カードキーなどでロック解除する)が停電により開かず、中に入れないということがありました。また、電気通信主任技術者が駆け付けできない場合の代理となる指揮命令系統も考えることなど想定することはたくさんあります。
電気通信主任技術者資格取得を目指している方は、〇〇のサービスの場合、障害影響世帯数が〇〇世帯で、〇〇時間サービス停止である場合に〇〇報告を行うなど、覚えることが大変と思いますが、とても大切なことであるためしっかりと覚えましょう。
資格試験では「設備管理」「法規」出題される範囲です。
事故後の対応はとても重要です。
同じ障害を発生させないこと(再発防止)、発生してしまったら迅速に復旧させるための体制を構築すること。電気通信主任技術者にとって重要な業務です。
電気通信設備 障害の極小化対策
障害を発生させないこと、障害が発生した場合に迅速に復旧できる対応をするために、障害の極小化対策を行うことも電気通信主任技術者の業務の1つです。具体的には次のような対応があります。
- 予備機器の準備や配置
- 試験機器や環境の整備
- 応急復旧に必要な機材の配備
- 設備の2重化(冗長化・ループ化)
- 耐震対策、停電対策、防火対策
- 建物の災害対策
- 蓄電池や車両・発電機の燃料配備計画
予備機や試験機器の配備も行いますが、現在使用している設備の「故障率」「信頼性」などを把握し、適切な設備更新スケジュールや設備故障の未然対策実施を提案することも、電気通信主任技術者の業務です。
電気通信主任技術者試験の「設備管理」科目のうち、「設備の維持・運用管理」に該当する業務になります。
【保全】保全の種類、予防保全の手順、設備のライフサイクル管理
【安全・信頼性対策】【災害対策】などの項目で必要な業務となります。
電気通信設備・サービスが、安全で信頼性を高くすることが目的となります。
大規模災害時などは、通信の異常ふくそう発生や設備・ケーブルなど資材も入手できなくなります。資材の備蓄や災害協定など事前に準備することも業務の1つです。
電気通信事業法第49条3項では、電気通信事業者は設備について電気通信主任技術者の工事・維持・運用にかかる助言を尊重しなければならないと定められています。極小化対策は費用がかかり売上につながらないため、設備投資に消極的になりがちです。しかし、電気通信サービスの障害による影響は甚大であるため、電気通信主任技術者は極小化対策や方法についてしっかり対応をする必要があります。
維持運用に関する教育、訓練の立案及び実施
教育訓練を行わなければ、電気通信サービスの品質や信頼性を担保することができません。
障害発生時の指揮命令系統や体制を確認するためにも、とても大切な業務の1つです。
設備の維持運用管理のみでなく、顧客サポートや外部業務委託先など個人情報を扱う部門も含めて、教育訓練を実施する必要があります。工事協力会社を含めて「労働安全大会」や「事故事例勉強会」など安全分野の教育・訓練を実施します。
教育や訓練はとても大事だよね
訓練をしているから障害が発生したときに迅速に対応ができるんだね!
電気通信主任技術者試験の、「設備管理」科目「維持運用管理」項目や、「法規」科目で問われる内容です。
維持運用に限らず電気通信事業を営む上で、憲法で定められている「通信の秘密」など、コンプライアンス業務の教育も含めて実施することもあります。
電気通信事業 運用ルール(管理規定)の実施状況の把握や見直し
解説してきた電気通信主任技術者の業務は、自主基準で定めた「管理規定」により工事・維持・運用の監督をおこなっていますが、当然1人で全ての業務を行えるわけではなく、色々なエンジニアや協力会社と一緒に電気通信設備の管理をしています。
定期的にエンジニアや協力会社と情報共有や意見交換を行い、管理規定の実施状況の確認や課題点の模索、見直しを行うことも大事です。
電気通信事業に携わるいろいろな人の意見を聞いたり、ちゃんとルールが守られているか確認することも業務の1つなんだね。
電気通信サービスやIT技術は日々進化しているため、セキュリティ対策やクラウド・仮想化技術、AIサービスに対応をすることなど電気通信主任技術者の業務は多岐にわたります。
まとめ 【9つの業務】伝送交換主任技術者と線路主任技術者の資格試験に向けて
電気通信主任技術者の9つの業務を解説しました。
電気通信設備の工事、維持及び運用の監督することですが、目的は「電気通信サービスの安全と信頼性の確保」を常に検討して、目的を達成するために「運用ルールと体制構築」を行うことが電気通信主任技術者の業務になります。
9つの業務を知ることで、電気通信主任技術者試験で問われていることがイメージできたのではないでしょうか?
- 設備の機能や仕組みを知らなければ、監督することができない【電気通信システム・設備管理】
- 障害を発生させないための維持管理方法はどうするか?【設備管理】
- 障害発生後にどのように対応をするか?【設備管理・法規】
- 安全・信頼性の確保を行うこと、管理規定などのルール策定や教育実施【全科目】
範囲が広いのは、電気通信サービスはたくさんの分野に関わっているため。
各分野には専門のエンジニア(IT系のエンジニア)や技術者(工事担当者)がいますが、電気通信サービスはどの分野で障害が発生してもサービス停止になる可能性があります。俯瞰して管理監督をする電気通信主任技術者が必要となります。
資格試験は大変ですが、全ての項目は業務にとても重要な知識のため、勉強していることは決して無駄になりません!
ぜひ、電気通信主任技術者資格取得をして、9つの業務の監督をしてみませんか?
読んでいただいてありがとうございます!
新しく何かをはじめようとしているあなたを応援します。
それでは、若葉でした。